さて新宿コマ劇場、会場に入った途端、「ものを大切に」という言葉が胸に刺さりました〜
。すり鉢型はギリシア式の野外劇場と同じ形、それに日本演劇界の発明である廻り舞台が三重になって・・・と思うと取り壊すのが勿体なく思えます。また、客席全体にスロープがついているので、舞台床面の波模様がよく見えてとても綺麗でした。これを設計した方の心づくしが伝わってきて、『五右衛門ロック』ロングラン公演のため閉館延期とかいうことにならないかと思ってしまいますね。
さて、劇場みたいに閉鎖した空間ってどうしても「海」なんかは感じにくいものですが、風の渡るのが感じられるような色調で、シンプルなんだけど印象強い美術でしたね〜。また、アンサンブルの方たちが歌舞伎の黒子よろしくアッケラカンと舞台装置を動かすのが、いかにも「芝居小屋」的な雰囲気で、とても面白かったです。もしも背景の空が動いたら最高だと思うのですが観客の浅知恵でしょうか。(それとも他に気を取られている間に動いたりしたかな
)
照明も、客席全体をパーッと照らす場面が幾つかあり、その間はスロープの角度が強いのもあって前列が視界に入らず、のびのびと広い空間に放り出されているように感じました。装置や照明はやはりある程度後列のほうが堪能できますね〜。チケット争奪戦を勝ち抜いて前列をゲットされた方もぜひ一度は後ろからご覧になることをお勧めいたします
。また舞台上では役柄にぴったりはまった照明で、北大路欣也さんを照らす光は威厳みなぎるオーラそのものだったし、松雪泰子さんはどこまでも白くて綺麗だし、川平慈英さん&右近健一さんは欲がキンキラキン
と音を立てて輝くよう・・・。それに殺陣のシーンはあんまりクルクル色が変わるような「いかにも」なのはイヤだなあ、と思っていたら、ピシッとシンプルで、動きがよく見えて嬉しかったです。おかげさまで目から下はベールという苦境(?)にも関わらず、青山航士さんの動きもばっちり追えました。新興宗教なんか光をうまく使って信者をその気にさせるそうですが、こんな照明だとホントに心を操られそうでちょっと怖いかも。
いや〜劇団新感線の作品は「てんこ盛り」とは聞いていたけど、この芝居のクリエイティブ・スタッフの力技もホント凄いですね。・・・しかしこの作品、一体どれだけ書く事があるんだろう。今日はこの辺で。