まだまだ先だな〜と思っていたけれど、あと10日ほどで『ルドルフ RUDOLF The Last Kiss』開幕ですね
青山航士さんの出演を知って「え? ハンガリーで初演?」と最初からクエスチョンマークを乱れ飛ばしながら原作やら周辺本を読み始めましたが、ホント島国の住人にとっては想像を絶するような政治背景の複雑さです。これをミュージカルの舞台に、というのは凄くたいへんな作業ですよね〜。
ルドルフが成人する頃、ハプスブルク家支配は600年におよぼうかというところでしたが、フランツ・ヨーゼフの在位中にイタリア領を失い(1859)、ドイツはプロイセンに押さえられ(66)、縮小の一途をたどりつつ「帝国」の体裁を保つには強力な反中央政府運動をおこなっているハンガリーの独立を半ば承認するしかなく、帝国は黄昏の時代を迎えていました。独立容認にはエリザベートのハンガリーびいきも大いに影響したといわれていますが、もともとは姑ゾフィーがハンガリーに対し厳しい態度を崩さなかったため、嫁のエリザベートが面当てとしてハンガリーに肩入れしたといいます。スケールの大きい嫁姑戦争ですね〜
その一方でチェコ民族との問題も山積していました。ボヘミアは工業地帯として大躍進しているのに農業国のハンガリーだけに自治が与えられるなんて!とこちらも不満が鬱積。おまけにプラハの街の中産階級と下層労働者の大半はチェコ人で、官僚らエリートはドイツ人、金融界を支配しているのはユダヤ人、という民族別格差社会が出来上がってしまっていました。そんななかターフェが首相に就任し、国家公務員はドイツ語とチェコ語の両方を話さなくてはならない、という言語令を出してチェコ語を話さないドイツ人達の怒りを買い・・・と帝国内は民族同士が全方向で衝突しているような毎日だったようです。日本版で乱闘シーンがあるようですが、当時の米領事がアメリカの奴隷制度論争以上に深刻、と報告しているくらいですからかなり激しかったでしょうね。
こんな帝国を引き継ぐはずのルドルフは、ツェップスの主宰する「新ウィーン新聞」に匿名で記事を書き、問題の解決について語りつづけましたが、その主張がなにかの形になる前に彼はこの世を去りました。当時のオーストリアの状況は、適当に民族の名前を変えると今も世界のどこかで起きている紛争に当てはまるような気がします。
顔色のすぐれないルドルフにエリザベートが病気ではないのか、と尋ねたとき、ルドルフは「ただ疲れて、神経がずたずたになっているだけです」と答えたそうです。憎しみの連鎖が、21世紀になっても絶えはしないことが、彼には見えていたのかもしれません。う〜〜ん、大したこと書いてないのにやっぱり長くなりました。読んでくださった方、すみません。