東京公演が千秋楽を迎えた『ボーイフロムオズ』、ついに西日本のファン待望の大阪公演です
。青山航士さんは北海道から沖縄まで、のNHK教育『うたっておどろんぱ!』(うわぁぁぁ懐かしい〜)に出演しておられたので、期間は短くても東京以外で公演があると全国にちらばるファンは嬉しいですよね。
さてアメリカもなにかと東海岸と西海岸に分かれています。そしてその間を、大陸を横切って絶え間なく往復する人たちがいて、bicoastalと呼ばれているそうですが、大企業勤めや専門職の、仕事に生きるタイプの人が多いので、少し特権階級的な自負(本人側)と軽蔑(傍観側)のこもっている言葉なのだとか。
ソロになってNYの小さなクラブで活動を続けていたピーターは、74年にオリビア・ニュートンジョンの大ヒット"I Honestly Love You"を作曲、人気ソングライターとしてミュージックシーンに躍り出て、そんな一人になりました。その言葉にひっかけた"Bi-Coastal"、曲自体もウィットに富んでいて『オズ』での演出も楽しいですよね。この頃にピーターはマンハッタンの自宅以外にカリフォルニア州サンディエゴ近郊のLeucadiaという海辺の街に家を買ったそうです。
でもそこは生まれついてのショーマンでオーストラリアのちびエンターティナーだった彼、「隠されたパラダイス」と呼ばれている瀟洒なリゾート地でNYの喧騒を離れた暮らしに浸りこむことはなく、NYのメジャーなホールでステージ活動を再開します。例の「ラクダに乗ったエンターティナー」は目の肥えたNYの観客にピーターが放った力技だったようですね〜。82年のNYタイムズでも「(ラジオシティ)ミュージックホールの名物」とお墨付きが・・・。日本版『オズ』で(特に)話題のロケッツは、NYでは女性ダンサーだったそうですが、そのかわり(?)ピーター自身がCarmen Mirandaという電飾ぬきの小林幸子さんとでもいいますか、頭に載せた果物かご
と派手な衣装がトレードマークだった女性歌手を真似て女装したそうです。曲は最高だし、歌もあんなにうまいんだからそこまでしなくても・・・と思うくらいのサービス精神ですわ〜。改めてピーター・アレンという人はいろいろな意味で複層的な人だったんだなあと思います。06年オーストラリア版のアンサンブルの衣装が凄く派手だったのは、そこからヒントを得ているのかもしれませんね。
『ニューヨークシティ・セレナーデ』の邦題で知られる映画の主題歌"Arthur's Theme"が発表されたのはピーターのステージ活動がノリに乗っていた81年。ピーターが書いたのはあの有名な"When you get caught between the moon and New York City"だけだそうですが、このフレーズの夜空に星をちりばめるような魅力なしにはオスカー受賞はなかったでしょう。ジュディ・ガーランドってさすが先見の明があります。ハリウッドも制して、なんだか何人かの人生を見ているみたい。